【2025年度版】処遇改善等加算の一本化を徹底解説!園経営に活かす最新ガイド

2025年度(令和7年度)から、保育士の給与を底上げするための「処遇改善等加算」が大きく変わりました。
これまで分かりにくかった 加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの3本立て が整理され、新しい3区分(基礎分・賃金改善分・質の向上分) に一本化。
この記事では、以下をわかりやすく解説します。
- 新制度の全体像
- 配分ルールと賃金改善の方法
- 確認方法の変更点
- 経営悪化時の特別事情への対応
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処遇改善等加算とは?

制度の目的
処遇改善等加算は、保育士の賃金を底上げし、人材の確保と定着を進めるために導入された制度です。長年課題とされてきた「給与水準の低さ」に対する改善策として位置づけられ、2013年から段階的に整備されてきました。
旧制度の流れ
制度はスタート以来、いくつかの加算が順次導入されてきました。
まず2015年に始まったのが「加算Ⅰ」です。これは全ての職員を対象とし、勤続年数やキャリアパスの整備状況に応じて加算される仕組みでした。職員が長く働き続けられるよう、園ごとに昇給制度や評価制度を整備することが求められたのです。
続いて2017年には「加算Ⅱ」が導入されました。副主任やリーダーといった役職者に対し、月額5千円から最大4万円の加算を行う仕組みで、経験や責任を担う職員に重点的に処遇改善を行うことを目的としています。
さらに2022年には「加算Ⅲ」が新設されました。こちらは全ての職員を対象に、月額9,000円を一律に上乗せする、いわゆるベースアップ的な加算です。現場の声として「もっと広く公平に恩恵を受けたい」という要望が反映された形でした。
このように、処遇改善等加算は時期ごとに段階的な見直しを重ねながら、全体的な底上げと役職者への重点加算を組み合わせた制度として発展してきました。
なぜ一本化するのか?

主な課題
処遇改善等加算は、保育士の処遇改善を目的として段階的に整備されてきましたが、制度が増えるたびに複雑化し、現場では「わかりにくい」「運用が大変」という声が強まっていました。
まず大きな問題は、制度そのものが複雑で理解しづらいという点です。加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲそれぞれに要件があり、園長や事務担当者でさえ全体像を把握するのに苦労していました。
さらに、計画書や報告書といった提出書類が加算ごとに存在し、事務負担が非常に重いことも現場を悩ませていました。小規模園では専任の事務職員がいないケースも多く、園長や主任が保育業務と並行して対応せざるを得ない状況が少なくありません。
また、加算Ⅱでは「副主任等に月額4万円を必ず1人以上支給する」というルールがありました。これは大規模園であれば可能でも、小規模園では対象となる人材がいない、あるいは役割を固定しにくいといった理由で要件を満たせないケースが続出していました。
加えて、経験年数や研修修了の要件が制度設計の前提となっていたものの、現場では研修の機会不足や人員配置上の制約があり、「要件を満たしたくても満たせない」という実態とのギャップが生じていました。
一本化の目的
こうした課題を解消するため、令和7年度からは加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを統合し、新たに3つの区分(基礎分・賃金改善分・質の向上分)に再編されました。
一本化の狙いは大きく3つあります。
①まず、制度を整理することで全体像をわかりやすくし、透明性を高めること。職員や保護者に対しても説明がしやすくなります。
②次に、計画書や報告書を一体化し、園にかかる事務負担を軽減すること。事務作業に追われるのではなく、本来の保育業務に時間を使えるようにすることが期待されています。
③そして、これまで硬直的だった支給要件を見直すことで、園ごとの実情に合わせた柔軟な給与設計を可能にすることです。特に小規模園では、加算を使いやすくなるメリットがあります。
令和7年度からの新しい仕組み

新しい3区分
令和7年度から処遇改善等加算は一本化され、「基礎分」「賃金改善分」「質の向上分」という3つの区分に整理されました。それぞれの役割は次の通りです。
- 区分① 基礎分
- 園としてキャリアパスを明確にし、昇給の仕組みを整えることが前提となります。これは「勤続年数に応じて昇給する」という仕組みを当たり前にすることを目的としており、保育士が安心して長期的に働ける土台づくりにつながります。
- 区分② 賃金改善分
- 職員全体の賃金を底上げするための区分です。特定の役職や条件に縛られず、すべての職員を対象に処遇改善を行うことで、園全体の定着率向上や採用競争力の強化が期待されます。
- 区分③ 質の向上分
- 研修を修了した職員や、副主任・リーダーといった中堅層に重点的に配分される部分です。技能や経験を積んだ人材を正当に評価する仕組みであり、キャリアアップ研修との連動によって人材育成を後押しします。
この3区分によって「全員を支える」「全体を底上げする」「中核人材を評価する」という役割が整理され、制度全体のバランスが取りやすくなりました。
一本化のメリット
制度が一本化されたことによるメリットは、現場にとって非常に大きいものです。
まず、事務手続きが簡素化された点です。これまでのように複数の計画書や報告書を作成する必要がなくなり、園長や事務担当者の負担は大幅に軽減されます。
次に、加算Ⅱで課題となっていた「必ず1人に月4万円」というルールが撤廃されました。これにより、無理に役職者を設定したり特定の人に支給を集中させる必要がなくなり、園の規模や人員構成に合わせた柔軟な人事配置と給与設計が可能となります。
さらに、3区分に整理されたことで制度の趣旨が明確になり、園内での説明責任が果たしやすくなったのも大きなポイントです。保育士一人ひとりに「どのような基準で加算が配分されているのか」を示しやすくなり、職員の納得感や信頼感の向上にもつながります。
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配分ルールと賃金改善の方法

区分③の配分ルール
これまでの処遇改善等加算Ⅱでは「必ず1人に月額4万円を支給しなければならない」という固定的なルールがありました。しかし令和7年度からの新制度では、この“40,000円ルール”が撤廃され、より柔軟な運用が可能になっています。
新ルールのポイントは以下の通りです。
副主任やリーダーだけに限定されず、研修を修了した職員や実務経験豊富な中堅層など、園が必要とする人材に重点配分できます。金額は月額4万円以内であれば自由に設定可能です。
年度内にキャリアアップ研修の修了が見込まれる職員も対象に含められるため、研修受講を促すインセンティブとして機能します。
これにより、園は「役割や能力に応じてきちんと評価・処遇する」仕組みを設計しやすくなりました。
賃金改善方法の統一
もう一つ大きな変更が、賃金改善の方法が統一されたことです。
区分②(賃金改善分)と区分③(質の向上分)を合わせた合計額の1/2以上は、必ず基本給や毎月支給される手当に充てることが義務付けられました。残りの部分については、賞与や一時金での対応も認められています。
このルールによって、これまで「賞与でまとめて支給されていた」ケースから、固定給の底上げが必須となります。毎月の給与明細に反映されることで、職員にとっても「処遇改善の成果が実感しやすい=見える化された」形となり、安心感やモチベーションにつながることが期待されます。
賃金改善の確認方法の変更点

新しい確認の視点
令和7年度からは、賃金改善の確認方法も見直され、より明確で公平な仕組みになりました。特に重視されるのは次の3つの視点です。
- ①加算額以上の賃金改善が行われているか
- 受け取った加算額が、そのまま職員の賃金改善につながっているかをチェックします。単に補助金を受け取るだけではなく、確実に給与に反映されていることが前提です。
- ②加算以外で賃金水準を下げていないか
- 一方で、加算によって一部を引き上げたとしても、他の手当や給与項目を下げてしまえば意味がありません。そのため、「全体の賃金水準が維持されているか」も確認対象となります。
- ③定期昇給との区別
- 毎年の昇給(定期昇給分)と処遇改善による上乗せ分は明確に分けて算定することが求められます。これにより、園独自の努力による改善部分が見える化されるのです。
事務手続きの簡素化
確認方法の変更にあわせて、事務手続きも整理されました。従来は複数の様式や資料が必要でしたが、今後は「様式7」に統一され、計画書と報告書も一括化されます。
さらに、職員ごとの改善明細表を作成し、個別に改善額を明示する仕組みが導入されました。これにより、自治体はもちろん、園内の職員にも「どのように処遇改善が反映されているか」を透明に示せるようになります。
この変更によって、園は煩雑な事務負担から解放される一方で、賃金改善の実効性と透明性がより強く求められるようになりました。結果として、職員にとっては「処遇改善が確実に給与に反映されている」という信頼感が得られる仕組みへと進化したのです。
特別事情届出制度の導入

制度の仕組み
令和7年度から新たに導入されたのが「特別事情届出制度」です。これは、園の経営が一時的に悪化した場合に限り、一定の条件のもとで賃金水準を下げることを認める仕組みです。
例えば、利用児童の減少や予期せぬ収入減などで園の経営が厳しくなった場合、労使合意を前提とすることで、職員の賃金を必要最小限の範囲で引き下げることが可能となります。従来は加算を受けている以上「下げることは一切許されない」状況でしたが、現実的な救済措置として制度化されたものです。
利用にあたってのポイント
ただし、この制度を活用するためにはいくつかの厳格なルールがあります。
届出は「別紙様式7」で行う
→ 提出は「審査」ではなく「届出」扱いですが、正しく手続きを行う必要があります。
翌年度には必ず改善水準を回復することが前提
→ 一時的な措置に過ぎず、継続的に水準を引き下げることは認められません。
削減可能なのは「加算減額分」以内
→ つまり、加算によって積み上げられた分を超えて削減することは不可とされています。
制度の位置づけ
この制度はあくまで経営悪化時のセーフティネットであり、乱用するものではありません。実際には「園を守るために一時的に協力してもらい、経営が回復したら速やかに改善する」という姿勢が求められます。
職員側から見ても、合意と明確なルールのもとで運用されるため、納得感を持ちながら働き続けられる仕組みといえるでしょう。
園経営への影響と活用のポイント

制度改正によるメリット
新制度は、これまで複雑だった処遇改善等加算を3区分に整理したことで、全体像がシンプルになり、園内外への説明もしやすくなりました。
特に小規模園にとっては「必ず1人に4万円」といった硬直的なルールから解放され、園の実情に合わせた柔軟な配分が可能になった点が大きなメリットです。
また、区分②・③での基本給への反映が義務づけられたことで、職員は給与明細上で処遇改善を実感できるようになり、透明性と信頼性が高まる効果も期待できます。
注意すべきデメリット
一方で、制度改正に対応するには一定のコストも発生します。新しい様式への対応や、給与規程・評価制度の改訂といった準備作業が必要になるため、短期的には負担が増える園も少なくありません。
さらに、加算額は国の予算や算定方法に左右されるため、加算額が減れば支給額も減少するリスクがあります。その場合は職員への丁寧な説明が欠かせず、「制度の仕組み上やむを得ない」という点を理解してもらう工夫が求められます。
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経営者が今やるべきこと
新制度を単なる補助金としてではなく、園の人材戦略にどう活かすかが経営者に問われています。特に取り組むべきポイントは次の通りです。
令和8年度以降はキャリアパスの整備が必須となります。職員が「将来どのように成長できるのか」を示す仕組みを早めに整えておくことが必要です。
固定給の底上げが必須となった新ルールに沿って、給与テーブルや評価の仕組みを再構築しておきましょう。
「なぜこのように配分しているのか」を透明に伝えることで、職員の納得感や信頼を得られます。制度の“見える化”は、経営者自身の説明責任を果たすことにもつながります。
最新情報をチェックして園経営に活かそう

処遇改善等加算は、今後も制度改正や運用ルールの変更が続く可能性があります。最新の情報をキャッチアップし、園経営に活かすことが大切です。
「ほいくのイロハ」では、処遇改善等加算をはじめとする保育制度の最新ニュースや、園経営に役立つノウハウをわかりやすく解説しています。
園長先生や法人担当者の方も、ぜひ日々の経営判断にお役立てください。
まとめ
処遇改善等加算は、2013年のスタート以来、加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲと段階的に発展してきました。しかし複雑さや現場とのミスマッチが課題となり、令和7年度からは「基礎分・賃金改善分・質の向上分」の3区分に一本化されます。
この改革により、制度の透明性やシンプルさが高まり、園ごとの柔軟な給与設計が可能になりました。一方で、新様式への対応や給与規程の見直しなど、経営者側に準備負担が生じる点には注意が必要です。
今後の園経営で求められるのは、処遇改善を単なる補助金として捉えるのではなく、人材確保・育成の戦略的な投資と位置づけることです。キャリアパスや給与制度を整え、職員に分かりやすく説明することで、信頼と定着率を高めることができます。
処遇改善等加算の活用は、園の未来を左右する重要な経営課題です。制度を正しく理解し、積極的に活かしていくことで、「働きやすい職場づくり」と「安定した園運営」の両立が実現できるでしょう。
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